京阪石山坂本線「坂本」駅あるいはJR湖西線「比叡山坂本」駅から、日吉大社に向かい西に進むと、独特の石垣や歴史的な木造建造物が集まる一角に着きます。このあたりが、坂本の里坊のまちと呼ばれるところです。現在は数十カ寺が現存。戒光院は、そのひとつとして今に至ります。平成9年10月31日にこの里坊群を中心とした28.7haが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
比叡山延暦寺は、東塔・西塔・横川の三塔と十六の谷からなる三塔十六谷に僧侶たちが修行し生活しています。このうち、十六の谷と呼ばれているところにお堂が建てられていますが、これを山の坊すなわち「山坊」と呼びます。これに対して里に立てられたお堂が「里坊」です。比叡山での生活はいわゆる「論湿寒貧」といわれ、琵琶湖があるが故の高い湿気とお山の寒さで年齢を得た高僧にとっては厳しいものがありました。そこで天台座主より許しを得て里に住坊を建て、住まいとしたのが里坊です。
坂本の景観をつくっているもうひとつの要素が、まちのいたるところで見られる美しい石垣です。これは「穴太衆積み」と呼ばれる工法で、自然の石の形をそのまま巧みに積み上げる工法です。坂本の隣町である穴太地区で育まれ、見た目の美しさはもとよりその堅牢さに特長があり、安土城などの石垣にも取り入れられているばかりか、現代建築にも数多く見られます。
(※)「あのうしゅうづみ」と読みます。